SF初心者が読む、伊藤計劃『虐殺器官』(2/2)ネタバレ度★★★★★
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こんにちは、どらやきです
前回書かせていただいた記事(SF初心者が読む、伊藤計劃『虐殺器官』(1/2))内にて
『虐殺器官』のおおまかなあらすじについて触れたので、
今回は本文を引用しながら、本の解説をしていきます
かなりネタバレになると思いますので、ストーリー重視の方は注意!(次の章をすっとばしてください)
完全にネタバレな相関図(要注意!)
ストーリー展開に重きを置かない方は見てください
驚く程、多くの主要キャラクターが死んでしまいますが、
キャラクターの死、それぞれに意味があり、ひとつひとつ、著者の問題提起に繋がっています
人物の思想や性格を表すような長台詞が多く、行動の描写が丁寧であり(時々くどい)、
その一部を引用するだけで、未読の人にも筆者の思考が伝わるところが、この本の凄さでもあります
お気に入りシーン!
ひとつめ(文庫版217ページより)
「人間がどんな性格になるか、どんな障害を負うか、どんな政治的傾向を持つか。それは遺伝子によってほぼ決定されている。そこに環境が加えられる変化となると、ごくわずかだ。すべてを環境に還元して、人間の本質的な平等を謳う連中はいる。わたしだって、人間は平等だと思うし、平等な社会を築くこと、遺伝子の命令を越えた『文明』をもつことができるのが、人間という存在であると信じている。だがわたしたちの可能性やそれにともなう責務と、結果を説明するための科学を混同してはいけない。すでに起こってしまったことに対する原因はあるし、それに対する生物学的、脳科学的な説明もあるのだよ。きみはまず、自分が遺伝コードによって生成された肉の塊であることを認めなければならない。心臓や腸や腎臓がそうであるべき形に造られているというのに、心がそのコードから特権的に自由であることなどありえないのだよ」
ジョン・ポールによるこの発言は、一言一句覚えたいと思えるほど、わたしの心に刺さりました
特に最後の一文。こんなこと考えた事ありますか?
ふたつめ(文庫版376ページより)ある人物の、おそらく本音。”彼女”は妻、”赤ん坊”は自身の子。
「この世界がどんなにくそったれかなんて、彼女は知らなくていい。この世界が地獄の上に浮かんでいるなんて、赤ん坊は知らないで大人になればいい。俺は俺の世界を守る。そうとも、ハラペーニョ・ピザを注文して認証で受け取る世界を守るとも。油っぽいビックマックを食いきれなくて、ゴミ箱に捨てる世界を守るとも」
「アメリカはプライヴァシーの自由をある程度放棄して、テロの恐怖という抑圧からの自由を得ている」
この本では、9.11後、あらゆる情報が可視化された超セキュリティ社会を描いています
結局、自分の知りたい情報だけ手に入れて、安心してるんですよね
それ以上の情報を、自分も垂れ流していることに目もくれずに,,,
400ページの小説の376ページでこの攻めの発言、めっちゃ死亡フラグ立ってますね
このような長台詞、映画の中でどう扱われるのでしょうか?
活字で目にすると、訴えかける熱量が違いますよね アニメも楽しみですが!
では、タイトルの『虐殺器官』とは?
さきほどの引用より、
心臓や腸や腎臓は、確かに、皆同じ様な機能を果たすようにつくられているのにも関わらず、
なぜ心だけは、”個性的”で”独創的”で”自分固有のもの”などと言えるのだろうか
心さえも、プログラミングされた一つの”器官”でしかないのではないか
これがジョン・ポールの考えであり、タイトルの『器官』が示すところです
言葉は道具であり、進化の産物である、とも、ルツィアによって発言されています
他の国の言語を使う場面において、母国語では表せるある言葉、そのニュアンスにぴったりあてはまる言語が存在しないことってありますよね
その文化圏では、その細かな違いまで言語を発展させる必要になかった、とも言えます
つまり、進化の産物
言語とはいったいなんなんでしょうね
では、『虐殺』の部分について。
ジョン・ポールは、言語を用いて大量殺戮が起こるようにしむけていました
虐殺や紛争が起きた地域で話された会話を分析すると、ある文法の傾向が見られる
私たちの脳には、ある文法を使われた言葉を聞くと、虐殺をしたくなるようなプログラムが存在している
では、その文法を用いて国民に語りかけ続けるとどうなるか
ということで、虐殺器官
全体の感想
先日、ショウペンハウエル著『読書について』から、次の引用を目にしました。
”読書は他人にものを考えてもらうことである。
本を読む我々は、他人の考えた過程を反復的にたどるにすぎない。”
まさに、この本に、ぴったりの言葉ですね
長くなったので、以上!
あ、余談ですけどトップ画描かせていただきましたわーい!
それではハーモニー読み直しますおやすみなさい!