「グランド・ブダペスト・ホテル」を見ました
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「グランド・ブダペスト・ホテル」をやっとレンタルして観ました。
(なかなか書き慣れていないもので、読みづらかったり分かりにくかったりする点、多々あると思いますが…)
日本で公開されたとき、非常に評判が高かったようなのでとてもワクワクしながら観たのですけれど、期待を裏切らない素敵な作品でした。
この「グランド・ブダペスト・ホテル」は非常に格式の高い高級な一流ホテル。
このホテルのコンシェルジュであるグスタヴと、ひょんなことからグスタヴに雇われたベルボーイ、ゼロの交流のお話です。
とにかくテンポが良い。軽快で軽妙なお話でした。
一応ジャンルとしては「ミステリー群像劇」となっています。
グランド~のお得意様の老婦人が何者かによって殺害されてしまい、グスタヴが容疑をかけられてしまう。さあどうする!?というのが全体的な話の流れです。
話は、精神を病んだひとりの作家が、気分転換と療養を兼ねてこのグランド・ブダペスト・ホテルを訪れるところから始まります。
そこで彼が出会った一人の老人男性。作家はホテルのベルボーイからその老人男性がこのホテルの持ち主であることを知る。
作家は彼がホテルを所持するに至る経緯に興味を持ち、男性は話し始める―
何十年も前に話は遡ります。老人男性が少年だったときのことから話す必要があるのです。
実は、この老人男性こそがゼロ。
舞台として出てくる国は架空の国「ズブロフカ共和国」ですが、東欧を思わせるような国でした。ゼロは戦争で家族を失い、命からがらズブロフカに逃げてきた移民です。ズブロフカの人たちと民族が違うことは肌の色を見ると分かります。
なぜここで民族の話を出したかと言うと、ゼロが作家に話をする中で、「グランド・ブダペスト・ホテルに訪れる人々はみな金髪だった」と言うのです。作家は欧米人の設定でしょうね、いわゆる白人です。「みな金髪?」作家は聞き返します。「そうだよ、グランド~のような高級ホテルに訪れる人々はみな金髪の金持ちだからね」とゼロは答えます。しかし、実際ホテルに訪れる人々は「みな金髪」なわけではありませんでした。(と言うのは特に台詞などには一切出て来ませんが、ゼロがそう語る懐古シーンに出てくる客の髪色は様々だったのです)
ゼロには、高級ホテルに訪れるお金持ちはみな金髪(そして恐らくみな白人)に見えていたのでしょう。多分特に気に留める必要もない部分なのですけれど、個人的には非常に印象的でした。
↑一応参考までに。左がコンセルジュのグスタヴ、右がゼロです。
「ゼロ」というのは彼の本名ではありません。グスタヴが彼を雇うにあたって、これまでにどんな仕事をしてきたか、学歴などをゼロに尋ねる。ゼロは色々なレストランやホテルの仕事を転々としていて、一か所につき3ヶ月くらいしか経験がありません。
「学校は?」との問いには「読み書きができるくらい」。
グスタヴは矢継ぎ早に質問をして、ゼロの答えに対し、「ベルボーイとしての経験、ゼロ」、「学問教育、ゼロ」、「教養、ゼロ」と返していくんですね。それで彼の名前は「ゼロ」に。
グスタヴはホテルのお客様に対してはとても礼儀正しいです。何しろ一流ホテルのコンシェルジュですから。素晴らしいコンシェルジュです。でも口癖は「fuck」だの「fucking shit」ばっかり。すごく人間臭いんですよ。コンシェルジュとしての気配りだったり丁寧さと言うのも彼の本質だし、移民であるゼロを最初見下している感じやそう言った口の利き方の悪さだったり…すべてが彼の本質。言葉で説明するのはむつかしいですけれど、憎めない人でした。
殺人罪の容疑をかけられているグスタヴが自分に余裕がなくなってきて怒り狂い、ひどい言葉をゼロに浴びせるシーンがあります。「そもそもお前はなんでここへ来たんだ?」と彼がわめくと、ゼロは静かに「僕の故郷では戦争があって家族はみんな死んだ。僕はひとりでこの国へ逃げてきて、食べていくために働いている」と答えます。するとグスタヴは「ほんとうにひどいことをした」と言ってゼロに謝罪するのです。何て言うのかな…ほんとうに人間臭いんですよ。それが良かった。
最初はゼロを馬鹿にしてるグスタヴなんですけれど、彼を一流ホテルのベルボーイにふさわしい人間に育てるため、自身もかつてベルボーイだったグスタヴはいろいろなことをゼロに教えます。「我々の仕事は、客に要求される前にその要求に気付くこと。(例えば客が食事中にフォークを落としてしまったとしたら、客が「新しいフォークを」と言う前に持っていく。常にすべてのお客さんの行動を見ているのです。そこがどんなに広いロビーであろうと、どれだけたくさんのお客がいようと、です)気配りと気遣い。込み入った話も客からたくさん話されるが、何があっても絶対に口外してはいけない」
これはグスタヴのプライドです。一流ホテルのコンシェルジュとしてのプライド。彼は自分のホテルを非常に誇りに思っている。お金とか関係なしのまじりっけの無い、「人をもてなすこと」を仕事とし、またそれに従事する人間としての純粋で高貴なプライドでした。
『まとめてきなもの』
少しずつこの二人の間に友情のようなものが生まれていく様子、グスタヴの人間性…と言った要素をちょこちょことはさみながら、基本はスリリングでミステリーな物語です。(そこは説明すると長くなるので割愛)そのバランスが良い。何しろ会話のやりとり、物語の進み具合、シーンの切り替え等すべてにおいて非常にテンポがよく小洒落ていました。「コミカル」ではなく「ユーモア」と表現したい面白さのある作品。
なかなか上手く書けないですね笑 あまり洋画は観ない、といった方に寧ろ観て欲しい。邦画の面白さとはまた違った感覚で楽しめます。シーン(時間軸)によって画面のアスペクト比が使い分けられていたり、一流ホテルの内装の映像美など、視覚的にも興味深い。
なにしろ、「良ければ是非観て頂きたい」の一言です笑 なかなかこういうテンポの良さってありそうでなかったような。個人的には邦画にはない感覚のような気がします。こういうのを見てしまうと洋画ばかり見たくなりますねえ。莫大な予算がつぎ込まれたことだけが売り文句の、それこそクソ(fucking shit)みたいなハリウッド映画ではなくて、こういう小洒落た洋画が見たくなる。
ということでもしよかったら是非に。
「グランド・ブダペスト・ホテル」 シネマトゥデイ