虐殺器官

SF初心者が読む、伊藤計劃『虐殺器官』(1/2)ネタバレ度★★★☆☆

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はじめまして、どらやきです

レビューを書かせていただくのは初めてなので、はじめまして、と言うことにします
(以前ターザンの記事とか、ちょっとだけ書きました)
私は幼い頃から本が好きで、書店でアルバイトをしていたこともあります
ただ、「この作家さんの大ファンなんです全作持ってます!」というより、
「気になったものを手当たり次第読む」スタイルなので、
−努力して集めた知識を総動員した密度の濃い−レビュー、は、書けませんが
作家さんに対しては初心者でも、レビュアーとしては一人前になれるようがんばります
よろしくお願いします

最近読んで衝撃を受けた『虐殺器官』(伊藤計劃・著)

ノイタミナ映画化決定ということで、この本に興味を持った人も多いでしょう
わたしもそのひとりであり、今まで「ジャンル:SF」という言葉だけで敬遠してきました
(そのくせ、攻殻、PSYCHO-PASS、パプリカなんかのSFアニメには飛びつく)

著者である伊藤計劃は、2009年3月に34歳の若さでこの世を去るまでに3作の長編小説を残しました
(正確には『屍者の帝国』は冒頭の書き出し部分を残して伊藤氏が亡くなったため、友人であった円城塔が完結させ共著扱いとなっています)

その3部作、全てが今年ノイタミナによって映画化されます

映画公開の順番としては、
『屍者の帝国』10月2日→『虐殺器官』11月13日→『ハーモニー』12月4日

原作が書かれた順番としては、
『虐殺器官』→『ハーモニー』→『屍者の帝国』

時代背景としては、
『屍者の帝国』(19C末)→『虐殺器官』(9.11以降2020年頃?)→『ハーモニー』

わたしは、原作が書かれた順に読んでいます

(以下、文庫裏表紙あらすじより)

9.11以降の、“テロとの戦い”は転機を迎えていた。
先進諸国は徹底的な管理体制に移行してテロを一掃したが、後進諸国では内戦や大規模虐殺が急激に増加していた。
米軍大尉クラヴィス・シェパードは、その混乱の陰に常に存在が囁かれる謎の男、ジョン・ポールを追ってチェコへと向かう…
彼の目的とはいったいなにか?大量殺戮を引き起こす”虐殺の器官”とは?

人物相関図

初心者どらやき、早速これだけで諦めてしまいそうなので、ちょっと相関図にしてみました

虐殺器官 相関1

(写真は公式サイトよりお借りしました)
外国名の人物がいろいろ出てきますが、だいたいこの6人が識別できれば十分です

米軍大尉であるクラヴィスは、紛争地域において要人暗殺の任務を遂行するなかで、
名前があがるが毎回取り逃がしてしまうジョン・ポールという男に興味を持つ
つまり、紛争や虐殺が起こる場所には必ず彼がいた形跡がある
捉えた主導者を尋問にかけると「なぜこんなことになったのかわからない」と困惑され
実際数年前までは国民の信頼も厚く、平和の使者とされており、国内の情勢は安定していたという
ではジョン・ポールは一体どうやって、何のために、大量殺戮を誘発しているのか

全体の感想

衝撃的なタイトルとは裏腹に、グロテスクな記述はそこまで気になりません
これは、文章がクラヴィス視点の一人称で淡々と描かれているせいでもあるかと思います
(とはいえ、戦闘シーンでは、身体が、脳が、軽々と吹き飛ばされます)
これは個々の読み方の問題になりますが、私は300Pくらいまでは主人公と同一の視点でいたはずが、
途中から主人公のことを、俯瞰して読んでいました そのことに終盤に気づき、はっとしました
「はっ!」と言いました・・・ドトールで。

はじめにSFは敬遠してきたと書きましたが、本作はSFというジャンルを借りて、現在私たちが直面している社会への問題提起(のタネ)を、これでもかと言う程詰め込んでいます
「管理社会」や「環境破壊」「貧困」に加え、「言語とは何か」「死の境界」と、取り上げたテーマは幅広く、著者が行ったであろう下調べの膨大な量やその丁寧さは容易に想像できます
いくつかのジャンルの書籍、漫画、映画を並行して見終えたかのような読了感
だからこそ、読み終わって思うこととしては、全ての内容を理解しなくてもいいし、
映画を先に見て、原作で補足してもいい、と
(ただ、ミステリーとしての評価も高いため、ネタバレについては個人の裁量でどうぞ)

また、大森望による解説がとにかく素晴らしい(ので文庫がお勧め)
解説の中では本作に対する他の方のコメントを引用しながら著者の略歴にも触れています
作者が闘病の最中書き上げたという経歴を作品の価値に組み込むことは作品自体の評価を過剰に押し上げてしまい兼ねないという意見もありますが

長くなってきたので、超ネタバレ記事は、その2に続きます
その2では、本文を引用しながらレビューします!

SF初心者が読む、伊藤計劃『虐殺器官』(2/2)ネタバレ度★★★★★