劇伴が素晴らしいアニメ5選【その4】菅野祐悟/『サイコパス』
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どうもあいたんです。
「劇伴が素晴らしいアニメ5選」第4作目は『サイコパス』です。こちらの作品は、2012年に第一作、2014年に2期がフジテレビ「ノイタミナ」枠にて放送され、2015年には劇場版として興収8.5億円を記録したヒット作です。『踊る大捜査線』の本広克行氏が総監督を務めたことでも話題となり、アニメファンに限らず多くの人を魅了しました。
作品紹介:サイコパス
舞台は、人間のあらゆる心理状態や性格傾向の計測を可能とし、それを数値化する機能を持つ「シビュラシステム」(以下シビュラ)が導入された西暦2112年の日本。すべての人々が、実際に犯罪を起こしたかどうかではなく、「犯罪計数」と呼ばれる数値によって予測的に管理され、「潜在犯」として裁かれる世界。そこでの公安局刑事課一係の活動を中心に、正義や人の在り方に対する葛藤が描かれている。
劇伴作家:菅野祐悟
アニメに限らずドラマ、映画、CMと幅広く音楽で活躍する菅野氏。『踊る大捜査線』シリーズや『ガリレオ』シリーズなど、数々の有名作品で劇伴を担当している。『踊る』の本広氏が監督を務めるドラマ『SP』で劇伴を務めたことがきっかけとなり、本作『サイコパス』でも音楽を担当することになった。
主にテクノやオーケストラを基調としている。『サイコパス』では全体的に低域をきかせた重く暗い雰囲気の曲が多いが、そんな中リードトラックの「PSYCHO-PASS」は『踊る』の「MOON LIGHT」を彷彿とさせる刑事ドラマに必須な熱い一曲として存在感十分。また軽快なアコースティックギターを交えた「ドミネーター」も印象的である。
考察:『サイコパス』に見る現代人の苦悩と救い
本作は「刑事もの」であるがゆえ、「犯罪計数」を割り出すためのシステムとしての「シビュラ」に目が行きがちであるが、実はこの代物はさらに包括的な問題をはらんでいる。例えば、この世界では進路選択は自分で行うものではなく、「シビュラ」による適性判定によって最適とされる解が与えられ、半ば強制的に決定された進路を歩むことになっている。そこに個人の意思は反映されない。「シビュラ」とは、本来人間が悩み自分で選択すべき一切の問題を排除し、機械的に最適解を導くためのシステムなのである。つまり、善悪のことも職業のことも食糧(穀物)のことも、システムや技術が進歩して人間が悩まなくてもいい社会が『サイコパス』の社会なのだ。
「人にとって幸せとは何なのか」
経済的にある程度豊かになり、情報が溢れる現代社会では、その問いの答えを見つける作業は極めて困難である。これは筆者の印象にすぎないが、我が国日本では、一世代前であれば「良い学校を出て、良い会社に入り、一生懸命会社に尽くし、出世する。結婚し、安定した家庭を築く」というのが一義的に幸せの定義として共通の価値を持っていたように思う。社会一般の幸福が、個人の意思と合致していたのだ。しかし、様々な選択肢が広がる今の日本では、幸福の定義は一様ではない。個人が各々の価値観に従って「幸せ」を定義し、それぞれ人生を選択していくことが求められる時代になりつつある。ただ、各人の価値観を信じるという生き方は、社会の流れに身を任せる生き方と比べ、個人にかかる負担が大きい。常に自分の人生や自分の価値に疑問を抱き、それらを自分で背負い込むことになる。そうした”つらさ”をシステムによって取り除いた未来の世界が、『サイコパス』の世界なのである。
だが、悩みのない人生、何も考えずに生きていける社会……果たしてそれは本当に「幸せ」なのだろうか。意思を持たない個人に、「幸せ」などありえるのだろうか……それこそが本作に登場する犯罪者槙島の思想であり(槙島は「意思を持たない個人は人間として価値がない」とまで言い切っている)、作品においても最も大きなテーマとなっている。
20話の常守の回想・イメージシーンにおいて、「人にとって幸せとは何か」という問いについて、答えを導くことはしないまでも本作のスタンスが語られる。問題を自分の中に抱え悩むことはつらい。しかし、重要なのは問題に対する結論ではなく、「自身で悩み抜き答えを出したか」ということだ。何かについて悩むのは、それが自分にとって大切なことだからである。悩みがあるという状態は、大切なことが自分の中にある証なのだ。つまり、悩むことができるというのはそれ自体が幸せなことである、という主張だ。
この考え方は、個人が「幸せ」の定義を自らの中に抱えて生きていかなければならない現代人にとって、たしかな支えとなるものである。アニメ『サイコパス』は、不明瞭な時代に迷える我々に与えられた、未来からの救いなのかもしれない。
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