アニメ初心者におくる。アニメの入口5選【その2】映画ファンも必見! ~攻殻機動隊シリーズ~
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「アニメの入口5選 その1」と「このコーナーの概要・意図」についてはこちらへどうぞ。
[https://nikkech.com/2014/11/anime/post-216/]
映画ファンも必見!アニメ「攻殻機動隊」
GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 [DVD]
アニメ作品としては、押井版の映画、神山版TVアニメ、黄瀬版映画ARISEの3作があり、これらは制作会社IGを代表する作品となっています。とっかかりとしては、海外ドラマのような雰囲気の神山健治監督によるTVシリーズが入りやすいのではないでしょうか。有名なのはあの大作「マトリックス」の元になった押井さんの映画「GHOST IN THE SHELL」ですね。「マトリックス」で見られる「画面に緑色の文字が流れる」「銃撃で柱や果物が砕ける」「アクションシーンでスローモーションになる」「後頭部にプラグを挿す」などの演出・設定はすべて押井版攻殻のオマージュなので、アニメファンに限らず映画ファン必見の作品となっています。演出・音楽含め独特の雰囲気を持つ押井版攻殻を気に入ったのなら、続編の「イノセンス」や、こっぷさんがこの前紹介していた「スカイ・クロラ」等その他の押井映画も見ることをお勧めします。
[https://nikkech.com/movie/20/]
以下、筆者の考察になります。
作品の世界とテーマ性について
原作は士郎正宗氏による漫画作品。所謂サイバーパンクSFの金字塔。
攻殻機動隊 (1) KCデラックス コミック
サイバーパンクはSF小説に造詣が深い人にとっては定番のジャンルだが、簡単に解説しておくと、特定のシステムや技術に取りこまれた(支配された)社会において、その構造に対する反発(パンク)を主題とする作品群のことを言う。
本作では、脳をネットに直接接続する電脳化技術や、身体をサイボーグ化する義体化技術が普及した社会を舞台に、テロや暗殺等の犯罪を防ぐため発足した公安組織「公安9課」の活動が描かれる。20年以上前の作品だというのに、現在になってようやく時代が追い付いてきたのでは……と感じるほどの未来感が素晴らしい。
脳を直接ネットに繋ぐということは、すべての個人の脳とネットが相互作用を及ぼし合う状態にあるということを意味する。個人の思考はネットに反映され、ネットを漂った情報はその他の個人の思考に影響を与える。それが常態化した場合に起こるのは、思考の画一化である。本来人というのは各個人で別個に考え、別個に行動する生き物である。しかし、それがネットを介して並列化されることにより、多様性が失われてしまうのだ。今日の社会では脳を直接ネットに繋ぐとまではいかないが、ネットの発達によってそれにほぼ近い状況が確立されており、こうした問題はすでに現実に起こっている。例えば所謂「炎上」がそれである。誰かがやり玉に挙げられたとき、その事象・事件に対して関心もなければ自身の考えを持っているわけでもないのに、周囲と一緒になって叩く……というような行動がネットではしばしば見られるが、これも思考の画一化の一つだと言うことができる。
こうした画一化はネットによってのみ起こるわけではなく、本作の中では義体化技術も同じ意味を持ったモチーフとして扱われる。主人公草薙素子は、脳を除く全身を機械化したサイボーグである。要するに、同じメーカーによって作られた同様の義体を用いれば外目には他人と区別がつかないのだ。
これら技術によって画一化されていく「個人」という存在。果たして個人が個人として存在する意味はあるのだろうか。本作では、こういった社会に対するパンクの要素として、個人が個人たる価値を求めていく様が描かれており、これを最大のテーマと見なすことができる。
筆者が考える本作が評価されている理由
本作が高く評価されている要因について、「サイボーグ化・ネットの並列化による画一化の中での自意識」みたいな内的なテーマも一つの軸ではあったけど、加えて政治経済歴史みたいな社会的な問題、すなわち外向きなテーマも表現されていたのが他の作品とは一味と違うところだと思っている。なぜか日本のアニメは内的なテーマを扱った作品が多いのですが、本作は社会派作品としても成立しているため、一定の地位を築ことができたのだと分析します。
最後に、筆者のおすすめを全部知りたいという方のためにこんな記事を書きましたので興味のある方はこちら(学生時代300本以上アニメを見た筆者が選ぶアニメベスト30)へどうぞ。
このアニメを気に入った人に見てほしいその他の作品
サイバーパンクな作品中心に選んでみました。
「サイコパス」:同じくIGによるアニメ。
「マルドゥック・スクランブル」:日本SF大賞を受賞した原作が魅力的。
「イノセンス」:映画版攻殻の続編。ジブリプロデューサー鈴木敏夫氏も関わっている。
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[https://nikkech.com/2014/12/music/post-1651/]
[https://nikkech.com/biography/post-3935/]